【完】『空を翔べないカナリアは』

美優に貴慶はふと、

「ほんまあの時代の大人って勝手なもんやで」

「勝手って?」

「自分の手に余ったら平気で物みたいにあちこち盥回しにしくさる」

貴慶の醒め切った気質は、どうやらその辺りが原因であるようであった。

「そんで、まぁ仲間とかはおったけど、血を分けたやつは信用ならんってなって、ほとんど親戚づきあいもせんくて」

だからお年玉だのクリスマスのプレゼントだの、そうした類いは母親以外からはもらったためしがない。



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