【完】『空を翔べないカナリアは』

しかし。

その澄んだ目に、何やら翳のようなものを感じ取ってもいた。

少なくとも。

こないだ見せてもらった王子のような崚より顔立ちの良さは、ハッキリ言って劣る。

が。

どうにも何とも打ち捨て難い何かを、長い睫毛の奥に、古風な雰囲気の貴慶はまとっているのである。

「どうしてなんだろう…」

美優は気がつくと、貴慶のことだけを考えていた。



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