【完】『空を翔べないカナリアは』

実際。

その場で美優をモデルにして、クローゼットにあった浴衣で着せてみせると、身八つ口の始末から襟の抜きかたまでが手慣れていて、

「この浴衣の柄なら花文庫より吉弥かな」

と黒い浴衣に合わせ、ピンクの帯を手早く吉弥結びにキュッと締めてみせた。

四半時もかからない早さである。

あまりの手際の早さに、

「何か脱がすのも早そう」

と思わず美優が言い、それにはさすがに貴慶も苦笑いする他なかった。



< 222 / 275 >

この作品をシェア

pagetop