【完】『空を翔べないカナリアは』
貴慶は何やらしばらく考えていたが、
「…了解、じゃあうちは、美優を選ぶ」
「えっ?」
「これにはもう一枚、こういう書類があってね」
貴慶が示した書類には、
「相続放棄」
という文字が見えた。
美優はたまらず、
「…ちょっ、待って!」
と叫んだ。
「貴慶さぁ…バカじゃない!? いくらなんでもそんなこと…」
貴慶は美優をしっかりと抱き締めてから、
「…今、美優の話を聞いて決めたことやから、放棄でえぇ」
「何で…?」
美優は訳が分からなくなって、涙がぽろぽろこぼれていた。
「だってさ…どう考えたって、こんなバカなギャルより財産のほうが大事に決まってるって」
美優は貴慶の胸に顔をうずめたまま、ぐずぐずに泣きじゃくっていた。