【完】『空を翔べないカナリアは』
〔6〕
結論が先になるが、このあと貴慶は相続を放棄する書類に署名をし、家裁宛に返送をした。
この件で貴慶は肚が据わったらしく、
「美優の実家のスナック手伝うよ」
といい、手元に例の寿司屋の大将から来たバイクは残したまま、バイク便の会社を畳み、リサのスナックで美優と働き始めた。
元来、社交的な貴慶でもある。
「ここは美男美女の店かぁ」
などと顔馴染みの常連にはからかわれながらも、順調な滑り出しを見せた。