【完】『空を翔べないカナリアは』
〔8〕
美優と貴慶が出逢って、丸二年目が過ぎた。
まさかそのときには今のような状況になるとは、美優も貴慶も考えすらしていなかったかも分からない。
とにかく雑貨は順調で、この頃になると少しコーヒーや紅茶を出したり、美優が焼いたクッキーを出したりするぐらいのことは増えた。
いっぽう。
貴慶は貴慶で、ワークショップを開いたりするなど、仕事が軌道に乗り始めており、
「とにかく喘息の薬代、稼がなあかんもんなぁ」
と言いながらも、美優とは大きな喧嘩もなくここまで来たのであった。