【完】『空を翔べないカナリアは』
夏を迎えると、金田湾の海水浴場に来た客で、雑貨もカフェのスペースも賑わうようになり、
「こういうところで二人で暮らして行くのも、悪くはないよね」
と美優もそれなりに満足なようではあった。
が。
夏休みの時期あたりから、美優の少し体調があまり芳しくなくなった。
「ひどくなる前に診てもらったほうがええんとちゃうかなぁ」
という貴慶の判断で、横須賀の病院に連れてゆくと、
「おめでとうございます」
ご懐妊です、と医師は告げた。