【完】『空を翔べないカナリアは』
懐妊という単語を、貴慶は最初よく飲み込めないでいた。
「確か美優は、もう産めない身体のハズでは…」
確かに美優はそう言ってもいた。
仮に出来たとすれば、美優と貴慶が浦安のディズニーへ出掛けたときにホテルに泊まっていて、タイミングから考え合わせるとそのときに出来たことになる。
「…確かにあの夜は、避妊はせんかった」
用具の持ち合わせでは足りなかった。
しかし。
そんな些末な穿鑿(せんさく)なんぞはどうでもよい。