【完】『空を翔べないカナリアは』
予定日が近づいた頃、美優は少し早めの入院をした。
貴慶はワークショップで、このときにはすでに全国区の工芸作家になってきていたが、姫路でのワークショップを終えてから三浦まで戻るスケジュールになっていた。
夕方に陣痛が始まり、リサが付き添って分娩室に美優が運ばれた。
が。
やや間があって。
急に産院が慌ただしくなった。
「意識は?」
という声がドア越しに聞こえる。
「…美優ちゃん、大丈夫かなぁ」
その緊迫にリサも萌々子も、運転手として来ていた慶も、全体にどことなくピリピリし始めていた。