【完】『空を翔べないカナリアは』
ヘルメットを抱えたまま貴慶が待合室まで来ると、
「美優が、美優が…」
リサが落ち着かない様子で言った。
「意識がもうろうとしてるみたいだから、帝王切開で出すって」
萌々子は言った。
「出産は命懸けやからなぁ…」
貴慶は自ら冷静であらねばならないと律するように、息を整え水を飲んだ。
「前に兵藤のとこの…あの女子アナ」
「みなみちゃんだっけ?」
「そう、そいつが出産したときには安産やったから、今回の美優ちゃんも大丈夫かなって思ってたんやけどなぁ」
慶は拍子抜けするような調子で言った。
「もう…これだから男は困る」
萌々子はあきれていた。