【完】『空を翔べないカナリアは』

夜が、明けてゆく。

窓から海側の灯りをじっと眺めていた貴慶は、毛無島や佐島のマリーナが、背後からの陽射しで明けてゆくのを眺めていた。

ドアが開いた。

「無事に終わりました」

母子ともに健康です、という声を聞いても、貴慶はまだ動かない。

「…貴慶、行こ」

リサが促す。

ようやく分娩室へ入った。



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