【完】『空を翔べないカナリアは』
見ると美優が酸素マスクをつけて横たわっている。
目は開いている。
「…美優」
貴慶だと美優は分かったようで、握った手を握り返した。
「やったよ、貴慶…貴慶の家族だよ」
美優はマスク越しに言った。
「お子さんは保育器にいますよ」
看護師に促されて保育器へ行くと、小さな箱の中に産まれたばかりの娘の姿がある。
「…貴慶さん、パパだね」
萌々子が言った。
「お前がパパとはなぁ…大丈夫か?」
慶は茶化した。
「慣れてゆくさ」
とだけ貴慶は言い、気が抜けたのかへたるように座り込んだ。