【完】『空を翔べないカナリアは』
やがて。
洗濯機が止まった。
貴慶が丁寧にブラウスやスカートを取り出すと、
「このまま着るからいい」
美優は再び寝室に入って、ブラウスとミニスカートに着替えた。
「…帰りたくないよ」
美優は小さく呟いたが、貴慶には聞こえない。
美優は泣きそうになりながら、
「ありがと」
そういうと貴慶と外へ出た。
「手、つないでいい?」
「えぇよ」
これが美優の精一杯の、芽生えたばかりの新しい気持ちの表現であった。