【完】『空を翔べないカナリアは』
〔7〕
美優と貴慶は店内を流すように見ながら歩いていたが、
「…なんかさ、混んでない?」
実のところ美優は人混みが、あまり好きではない。
「実は自分、こういう混み混みしたとこ苦手やねん」
貴慶は言った。
「…取り敢えず出よっか」
「せやね」
二人は再び渋谷の街へ出た。
道玄坂を背に再び渋谷駅の近くまで来たときである。
「ねーねー、そこの黒ギャルちゃん」
明らかにナンパの声がした。
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