【完】『空を翔べないカナリアは』
「慶からハンドメイドの作家のショップがあるって」
貴慶が言うと、
「お慶ちゃんったら、面白いこと言うなぁ」
萌々子はクスクスと笑い出した。
「多分、私のことだと思う」
この實平萌々子、高校生の頃には自らゴスロリと呼ばれるレースやフリルをふんだんに使った洋服をミシンで縫って着ていたという、そうした前歴を持つ。
「で、お慶ちゃんから鞄を探してるって聞いたけど」
「美優に鞄をプレゼントしようかなって」
「確か学生さんだもんね」
定時制だから卒業は十九歳になる。
「だったらあと二年ぐらい使えるのにしなきゃね」
萌々子は在庫を確認し始めた。