天神学園の奇妙な案件
深夜だったが、龍一郎はすずを近くの公園に呼び出す。

「悪ィ、すず先生」

「ううん、いいの。それで…?」

「ああ…」

龍一郎は今し方起きた出来事を、包み隠さずすずに話した。

ルカが黒幕である事、何としても彼を止めなければならない為、ルカに敢えて有利な条件でタイマントーナメントに誘った事、優勝した方に全ての権限が与えられる事…。

ルカもそこまでの悪党ではない。

仮に彼が優勝としたとしても、強大な修正力で世界が滅びるような事まではないだろう。

だが、ここまで築き上げてきた天神の歴史は変わってしまうかもしれない。

これまでの天神での出来事が、なかった事になってしまうかもしれない。

「…まぁ…俺が決勝まで行けなかったとしても、ティーダだっているしな」

龍一郎は力なく笑った。

「あいつ勇者だし、強ぇから…俺が駄目でも何とかしてくれるさ。ルナだってヴラド学園長の娘だし、すず先生だって悪魔の血を引いてるし…」

「龍一郎っ」

すずは、パチンと彼の頬を両手で挟む。

「無責任すぎるの。勝手に龍一郎が段取ったタイマントーナメントなの。貴方が責任取って優勝しなければならないの」

「……」

龍一郎は俯く。

「……怖ぇよ、すず先生……」

龍一郎は偽らざる本音を吐露した。

「ああ言わなきゃ、ルカは止められねぇと思ったんだ…どうにかしてチャンスを作らねぇといけねぇと思った…だけど…今から1か月死ぬ気で修行しても、あいつに勝つ力が付けられるかどうか…」

額に手を当て、顔を隠す龍一郎。

「怖ぇよ…俺が負けたら歴史が変わっちまうかもしんねぇ…そんな重てぇもの、俺1人で支えきれねぇ…」

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