天神学園の奇妙な案件
しかしすずは、そんな伝説の男子生徒の話を、夕城邸の大旦那から何度も聞かされて育った。
いつもムッツリとした顔をして、口を真一文字に結んで、厳めしい顔をした大旦那。
だが彼は、幼いすずにお菓子を買ってくれる時と、丹下 龍太郎の話をする時は、幾分優しい顔になった。
既にすずが生まれて物心がつく頃には、大旦那は第一線から退き、龍太郎も道場の師範に収まっていた為、2人が戦う姿を直接見た事はない。
辛うじて覚えているのは、大旦那が丹下家に将棋盤持参で出向く姿だろうか。
龍太郎の家に行っては、縁側で龍太郎と将棋を指し、龍太郎が王手を取られて癇癪を起こすのを、面白可笑しく眺めていたのだという。
あの大旦那が、戦い以外でも共に過ごすという丹下 龍太郎。
すずは大きくなってから、もっと間近で彼を見ておけば良かったと思った。
そんな魅力的な男など、そうはいないだろう。
一体実物はどんな男だったのか、話のひとつもしておけばよかったと。
ずっと思っていた。
いつもムッツリとした顔をして、口を真一文字に結んで、厳めしい顔をした大旦那。
だが彼は、幼いすずにお菓子を買ってくれる時と、丹下 龍太郎の話をする時は、幾分優しい顔になった。
既にすずが生まれて物心がつく頃には、大旦那は第一線から退き、龍太郎も道場の師範に収まっていた為、2人が戦う姿を直接見た事はない。
辛うじて覚えているのは、大旦那が丹下家に将棋盤持参で出向く姿だろうか。
龍太郎の家に行っては、縁側で龍太郎と将棋を指し、龍太郎が王手を取られて癇癪を起こすのを、面白可笑しく眺めていたのだという。
あの大旦那が、戦い以外でも共に過ごすという丹下 龍太郎。
すずは大きくなってから、もっと間近で彼を見ておけば良かったと思った。
そんな魅力的な男など、そうはいないだろう。
一体実物はどんな男だったのか、話のひとつもしておけばよかったと。
ずっと思っていた。