天神学園の奇妙な案件
思えば、橘 龍一郎に出会う前、すずは丹下 龍太郎に恋していたのかもしれない。

人づての噂しか知らない、活躍する姿は見た事がない、そんな想像の中だけの伝説の男を勝手に思い描いて、憧れていたのかもしれない。

だから、丹下 龍太郎の生まれ変わりと言われる龍一郎の話を聞いた時は、真っ先にその姿を見に行った。

龍太郎よりも背が低い青年。

だがその青年を、すずもまた瓜二つだと思った。

…歴史はその時から決まっていたのか。

恋愛感情など微塵もなかった頃から、龍一郎の事は気にかけていたように思う。

気にかけ、やがて恋をして、将来は結ばれ、娘が生まれるのだそうだ。

そんな男と、今。

「勝負…はじめっ!」

審判ヴラドの掛け声と共に、拳を交える。

白い空手着に身を包んだ龍太郎の生まれ変わりと、すずは真剣勝負に臨むのだ。

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