天神学園の奇妙な案件
「すずちゃんっ」

夕城邸の離れに住む鈴木一家、その良妻賢母である鈴木 七星(すずき ななせ)が、バスタオル1枚で屋敷をうろつくすずを叱る。

「そんなはしたない格好で歩き回らないのっ」

「ごめんなさいなの、ママ。でもお風呂上がりで暑くて…」

基本、すずは大好きなママには従順だ。

クルリと背を向け、服を着る為に部屋に戻ろうとする。

…その背には控えめながら、高級エナメルのような悪魔の羽が覗いている。

鈴木 すずは、『災厄の箱』人外の鈴木さんと七星の娘である。

愛らしい童顔と奇跡のような肢体には、確かに悪魔の血が流れている。

ゼウスがパンドラという娘に持たせた、あらゆる災いの詰まった箱(本来は壺)。

彼女が地上に着いた時、好奇心から開けたところ、全ての災いが地上に飛び出したが、急いで蓋をしたので希望だけが残ったという。

その禁断の箱と何らかの縁(えにし)を持つ鈴木さんと七星の娘であるすずには、当然と言えば当然、人間にはない不思議な力がある。

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