天神学園の奇妙な案件
老紳士の言葉からすると、この学園への訪問者だろうか。

「天神学園に、何か用なの…?」

すずはもう一度、はっきりと伝わるように一言一句区切って言う。

「…この学園の学園長…ヴラド・ツェペリはいらっしゃるかな?」

特に笑みを浮かべてはいないものの、老紳士は温厚な顔で告げた。

「学園長室にいると思うの。案内が必要?」

「いやいや…」

すずの問いかけに、老紳士は首を横に振った。

「私は『入れないのでね』。学園長がお忙しいようなら、構わないよ」

(入れない…?)

龍一郎が怪訝な顔をする。

老紳士の足が悪くて、学園長室まで歩いて行けないとか、そういう事だろうか。

…この時、何故誰も気付かなかったのだろう。

老紳士の『殺意』に桜の結界が反応して、学園内に入れないのだという事に。

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