天神学園の奇妙な案件
「それなら…おい、あれを」

「は」

老紳士は運転手に命じる。

車を降り、トランクから荷を下ろす運転手。

それは、革張りの大きな鞄だった。

海外旅行に行く際に使うような、人1人が入りそうな大きな鞄。

運転手は何の説明もせずに鞄をすずの前に置き、再び車に戻る。

「ちょっと…これ…?」

「では…学園長によろしく…」

一言告げて老紳士は窓を閉める。

同時に走り去っていく、黒塗りの高級車。

「…何だったのかなあ…あのおじいさん」

首を傾げる蒲公英。

その時だった。

きちんと閉じられていなかったのだろうか。

鞄は独りでに開いた。

中身が転がり出してくる。

人1人が入りそうな大きな鞄には、人が入っていた。

殴打されたと思われる酷い怪我を負い、意識が朦朧としている真久部 蛮。

相当な責め苦を受けたと思われる。

「蒲公英!見んな!」

龍一郎が、思わず蒲公英の目を塞ぐ。

「龍一郎!」

すずが叫んだ。

「蛮を保健室へ!急いでなの!」

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