優しい魔女は嘘をつく
「……じゃあね」
私が目を合わせずに言うと、堂本くんは「あぁ」と素っ気なく返した。
下駄箱まで歩いていくその背中を、その場から動かずに見ていた。
後ろから差し込む茜色の光が、堂本くんの整った顔をはっきりと映し出す。
やっぱり、綺麗だと思った。
手から離れた靴が地面で跳ねて、パァン、と二つの乾いた音を放つ。
「もうあんなところに座んなよ。寝てんのかと思ったわ」
堂本くんがそう口にしたので、私はムッとして答える。
「ね、寝てないよ!さっきは本当に頭が痛かったの!」
堂本くんが振り返らずに、ヒラヒラとこちらに手を振った。私は笑いながら、今度は「またね」と言った。