優しい魔女は嘘をつく
サボってた分ちゃんとやりなよ、と多野に言われて久しぶりに部活に行ったら、先生の話を聞くハメになって、予想以上に長引いてしまった。
教室に戻ってこれたのは、二時間が経った頃だった。
ドアを開けて中に入った時、そこに駒森はいなかった。教室の中には、窓から差し込んだ橙がこもっていた。
俺には、透明な人──つまり、幽霊が見える。
霊感がある、ということなのだろう。そして、俺とあと二人、駒森が見える奴がいる。
駒森は木越と俺以外のもう一人に、まだ気づいていないらしい。
普通気づくだろ……と鈍感さに呆れる一方で、俺は少しホッとしていた。
気づいたならパニックになるだろうし……やっぱり、黙っていてよかったのかもしれない。
今朝手渡された四つ折りの紙を開くと、そこには小さな字で【ごめんね】とだけ書かれていた。