優しい魔女は嘘をつく
駒森は、「透明人間」として、この世界で最後の時間を生きた。
そしてその時間も、明日で終わる。
彼女の四十九日がやってくる。その前に俺は、駒森に全てを話さなければならない。
けど……。
『拓〜、もう下校時間過ぎてるから、早くしないと先生にシメられるよ?』
いつも一緒に帰っている多野の声だった。
階段の下で待ってろって言ったんだけどな……。俺がいつまでたっても来ないから、おかしいと思ったらしい。
教室にひょこんと顔を出す。こんな肝心なときに……あいつ、本当にどこ行ったんだよ。
時計を見ると、もう六時を過ぎていた。