優しい魔女は嘘をつく
果夏は私を見るなり、私の方へと一歩、また一歩とゆっくり足を進めた。
淡い月の光に照らされた横顔は、酷く歪んでいた。
「は、つみ……?」
「……」
「初美、なんだよね」
「うん」と私が頷くと、果夏は私の前に、手を出した。
震えている手を掴むと、果夏は私に抱きついてきた。
「や、だ……嘘……こんな、こんなの……」
耳のとなりで果夏の震えた声が響き、鼓膜を揺さぶる。
久しぶりに触れた果夏の手は、とても冷たかった。