優しい魔女は嘘をつく

残された果夏だった。



それなのに四十九日、一番私のことを大切に思っていてくれた彼女に、ずっと気づかなかった。






「魔女」は──果夏は最初から魔法なんて使っていなかった。





私が辛い思いをしないように、嘘で塗り固められた世界をつくっただけだった。




そこから何度私は足掻いて出ようとしたんだろう。"透明"じゃなくなれば。魔法が解ければ、って。




そこには辛い現実しか残っていないのに。






元に戻ることなんて、最初から不可能だった。



自分で暗示をかけて、果夏の嘘をいいことに、幸せに過ごしてきて。



やがて自分が死んだことも忘れて、時間が過ぎるのも忘れて、そのままいなくなれたならいいな、なんて。




いくらなんでも、神さまが許してくれるわけがなかった。
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