優しい魔女は嘘をつく

そして、私はそれを勝手に変換していた。




よく考えれば、お互いがお互いを「嫌い」と言ったことが一度もなかったことぐらい、分かったはずなのに。





「だから、あの時、酷いこと言ったの。二人の気持ちを踏みにじって、事故に遭った。自業自得。死んでよかったんだよ、私は」






こんな自分が嫌になる。



笑って言った私の声に、被さるように果夏は尋ねてきた。





「なんで、そんなこと言うの?」




「……え?」




「……死んでよかったなんて思わないでよ。



あたし、遠くから見てたの。初美、笑ってるなぁ、って。その度にいつも、これでよかったんじゃないか、って思った。



そうやって、最後まで、笑っていてほしかったんだよ?



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