優しい魔女は嘘をつく
こんなにも短かったんだから。せめて、初美にとって、幸せな時間にしてあげたかった。
なのに、死んでよかったなんて思わないでよ。
そんなこと言ったら、あたしは、なんのために嘘をついてたの……?」
一気にそれだけ言った果夏。
私がなにか言い放った訳でもないのに、心臓がバクバクと鼓動していた。喉の奥で鳴っているみたいだった。
その言葉の一つ一つが、後になって胸を締め付ける。私の胸ははち切れそうだった。
少しの沈黙の後、果夏は私の手をほどいて、一歩後ろに下がった。
小さく息を吐いて泣きながら笑うと、次に果夏は、震えた声で呟いた。
「……結局あたしは、初美の邪魔にしかなっていないんだね」
窓の外の月が、流れていた雲に隠れる。教室の中には再び静寂が流れ、光がそっと引いていった。