優しい魔女は嘘をつく
見たい映画もあった。好きなアーティストの音楽も、最近聞いていなかったっけ。
買いたいものも、行きたい場所もあった。
そして──堂本くんと、一度でいいからケーキを買いに行きたかった。
堂本くんに教えてあげたいお店もあったし。もっともっと、やりたいことだってあった。
でも、心のどこかで、死を悟っていた自分がいたのかもしれない。
だから今、私は自分がするべきことが分かっているんだ。
指の隙間から覗く景色は、酷く歪んでいた。目の前で、果夏が静かに泣いていた。
「……でも、果夏が嘘ついてくれてよかった」
私が涙を拭いながら言うと、果夏は驚いて私を見た。
「自分が死んだんだって気づいてたら、こんなに楽しい四十九日、送れなかったかもしれない」