優しい魔女は嘘をつく
白のカットソーにグレーのパーカー。黒のスキニーパンツ。
友達の家に遊びに行った帰りで寄ったのはいいけど、こんな格好で来て良かったんだよな?
てか、俺だけがこんなところに来てるってのも変だけど。
周りを見渡して人がいないことを確認して、ついでに自分の服装も正す。
小さく息を吸うと、俺はゆっくりと吐き出した。
「久しぶり」
季節は九月。
夏の暑さが少しずつ和らぎ始めた時期。
目の前には、「駒森家」という文字の彫られたお墓が静かに立っている。
駒森 初美は、今ここに───俺の前に眠っている。