優しい魔女は嘘をつく

当然、弟子入りになって、俺は一から祖母に教えられた。



そして、今日はやっと俺が作った物を…………と思ったのだが、現実はそう甘くない。



和菓子作りを半年で覚えられるなら苦労なんてしないだろう。俺が持ってきたのは、祖父母の作ったものだ。




「いつか、あんたが作った物を持って行けたらいいね」──祖母が行きに言っていたのを思い出す。







高校の時は、自分がこんなことをするなんて、考えてもみなかった。




いや……駒森がいなくなってから、心のどこかでこうしようと思っていたのかもしれない。







俺と槙本が、駒森を騙し続けていた思い出が、あれからずっと忘れられなかった。



結局、何も知らなくてよかったはずの木越も巻き込むハメになってしまった。




忘れることもできない、高校二年の出来事。
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