優しい魔女は嘘をつく

どうして俺だったのか、だ。





『木越に頼めばいいんじゃねぇの?』





俺がそう言うと、槙本の表情が固くなった。そしてすぐ、首を振る。




『咲良は、嘘つくの苦手だから』





悲しそうに笑う槙本の笑顔に、俺は言葉を失ってしまった。



そんなこと言ったらお前も嘘つくことになるんだぞ、なんて言えなかった。




……なにか、事情があるんじゃないか?って、思ったんだよな。






先に沈黙を破ったのは俺。





それから、俺は槙本の手伝いとして、手紙を放課後に置くこと、朝に回収することを命じられた。



駒森を死なせてしまった。せめてその償いとして、幸せな四十九日を送らせてあげたい。
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