優しい魔女は嘘をつく
……ってそれより、凄く寒い……。
なんなのこの室温は。教室の中だというにに、どうしてこんなに寒いんだろう。
ブルッと震えてから、私は身を縮こませる。あぁ、寒い……寒すぎる。
右斜め前の地面には指定鞄があって、地味な色のマフラーもその上にぐちゃぐちゃにして置いてあった。
堂本くん、やっぱり男子だなぁ。
マフラーの毛に絡み付くように、小さなゴマみたいな水滴がついている。
そして窓の外を見れば、まるで霧がかかってるみたいに、静かに雨が降っていた。
それを見て、さっきの音の正体はこれだったんだ、と納得する。
堂本くんの髪の毛にも、キラキラ光る雨粒がついていた。
「あのさ……」
そこで突然、堂本くんが振り返ったので、驚いて体が固まる。