優しい魔女は嘘をつく
視線を移すと、いつの間にかクラスメイトのほぼ全員が教室の中にいた。
……あれ?そういえば……
「ねぇ、咲良(さくら)は?」
私が口にするより先に、教室の隅で他のクラスメイトと集まっていた果夏が、ぽつりと呟いた。
「……休みなんじゃない?」
果夏が言っていた、咲良───木越 咲良(きごし さくら)もまた、私の友達。
咲良は果夏とは対照的で、あまり目立たないような女の子だ。
背は小さくて、少し茶色のかかった髪は、いつも三つ編みにしてある。
そして、なんといっても、黒真珠みたいにくりっとしたあの瞳が特徴的。
そんな可愛い咲良だけど、控え目な性格であまり喋らないから、なんとなく暗いイメージがある。