優しい魔女は嘘をつく
【配役】の文字の横には、登場人物の名前がずらりと並んでいる。
その横には、ナレーションとか衣装作る人とか、ステージの装飾品を作る人、などと書かれていた。
「それじゃあ、配役を決めます。やりたい役がある人は、挙手して言ってください」
中本さんがそう言ってから、しばらく沈黙が流れた。
普通はここで、役の取り合いになる……はずなんだけど、辺りは静かだった。
男子、もっと積極的に行け。たぶんほとんどの女子はそう思っているだろう。
「はい!私シンデレラやりたい!」
私が手を挙げて立ち上がるけど、それに反応したのは、咲良と堂本くんだけだった。
堂本くんは振り返って、「だまれよ」と私を睨んでから前を向いた。咲良は何も聞こえないふりをして俯いている。
私はむすっとして、大きなため息をついてから、仕方なく椅子に腰を落とした。