優しい魔女は嘘をつく
「解いてくれないなら、別にかけてくれなくたって良かったのに……」
ぼさっと呟いて、私は窓の外に目を落とした。まだ、銀杏の葉は青いまま。
あれから少しずつだけど、堂本くんとお喋りをするようになった。
あの後、お目当てのケーキも買えたらしい。
「めっちゃ美味かった」といつだったか、放課後にケーキの感想を聞いたっけ。あ、それと、風邪も治ったらしい。
堂本くんと咲良の距離は相変わらずだけど、私はだんだん彼のことが分かってきた。
席を離れると、堂本くんの前に来て話しかける。
「ねぇ、堂本くん、私シンデレラやりたいな」
堂本くんは頬杖をついたまま、私を無視して黒板を見ている。
咲良は横目でこちらをちらっと見てから、驚いたように目を開いた。