優しい魔女は嘘をつく
「習ってたんだろ?じゃあ木越がやればいいんじゃねぇの?」
「シンデレラは木越さんにしよー!」
「あの、えっと……」と口をパクパクさせているだけで、反論できずにいる咲良。
やがて無理だと悟ったのか、涙の滲んだ目で私の方を見て助けを求めた。
……でも、私じゃみんなを説得できない。
「咲良、私も応援するから頑張って!」
私はそう言って、咲良に握り拳をつくって見せた。
「う……」とさらに泣きそうになる咲良だけど、その間にも、中本さんはチョークを握って書く準備をしていた。
「木越さん、お願いできる?」
中本さんが咲良に聞く。
これはもう……仕方がないんじゃないか?