Can I love...?【短編小説集】
―――そうだ、何も変わらなかった日常の中で、たった二つだけ変わったことがあったんだ。
一つ目は、周りの視線。
あれは単独でいる私が珍しいわけでも、いきなり泣き出したことが奇妙だったわけでもない。
・・・「あの子、だよね。この前死んだ子が唯一の友達だった、って子は。」
「そうそう、いつも一緒にいたよね。さきちゃん・・・だっけ?その子には友達がいっぱいいたみたいだけど、あの子にはさきちゃんだけだったんだよね。」
「あの子、かわいそう・・・。」
・・・「あの子、誰としゃべってるんだ?」
「きっと俺らにはわからない何かだよ。」
「どっちにしろ怖い。」
「いいよ、あっちいってようぜ。かかわったらろくなことにならないから・・・。」
そういえば、こんな会話がよく聞こえていたんだ。ただ、私を憐れみ、蔑むだけの声。
二つ目は、最近よく見かけるニュースだ。
『都内某所で女性の変死体発見』
『東京都近郊の女子高校生か』
・・・これはここ最近私が目にしたニュースの題名。
「・・・そういえばさ、さっき言おうとしてたことなんだったの?」
「あぁ、いや、あの子いたじゃん?ほら、さきちゃん。あの子の話題ずっとニュースに出てたじゃん?」
「確かに。私、今朝も見たよ。」
「ネットにもバンバン出てるしね。さっきのさきちゃんの友達の子みたいな子もいるんだから、もうそーっとしといてあげてほしいよね。」
「なにそれ同情?あんた優し―じゃん。」
「まぁねぇ・・・。」
・・・今朝の会話の続き。あの人たちの声は馬鹿みたいに大きいから嫌でも耳に入った。
そう、変わったのは、毎朝見るニュースにもふとつけるテレビ番組のニュースにも頻繁にさきの話が出ること。ニュースに出るさきは毎回毎回、笑ってる。いつかの学校行事の写真やどこで撮ったのかわからないくらいの日常の写真。全部、笑ってる。
そして聞き飽きた言葉、「こんな無力な少女を傷つけて、犯人は何がしたいのでしょうか。」
うるさい、黙れ。無力なのは上辺だけの用意されたセリフしか吐けないお前たちのほうじゃないか。どうせお前たちはさきのことなんかすぐに忘れて明るい日常に戻るんだろ、なのにさきのすべてを見てきたかのようなことを言うな。
それに周囲の無責任に放たれる言葉だって。何がかわいそうだ何がおかしい。さきは殺されたんだぞ、さきは今もずっと独りぼっちで今もその時の恐怖を抱か得ているのかもしれないんだぞ。さきは、さきは・・・!!!