家族
翌日のテストは散々だった。放課後、問題集を提出しなかったため先生に呼び出された。
「提出期限を守りなさい。せっかく昨日注意したボタンは付けてきたんだから、これから少しずつ改善していきましょう。」
 今朝着替えているときにはあまり気にしなかったが、とれかけていたボタンがしっかりと縫い付けられていた。学校からの帰り道、ずっと昨日の不思議な出来事について考えていた。
「ただいま。」
「おかえりなさい!」
返ってきたのは父と祖母の声だった。
「父さん、仕事は?」
「あれ、言ってなかったっけ?今日は休み。大事な日だから、家にいたかったんだ。」
そう言った父は笑っていた。
「今夜はおばあちゃんがごちそう作るからね!」
気合いの入ったエプロン姿の祖母も笑顔だ。僕も学ランのボタンに手を当て、昨日の母の言葉を思い出して笑顔がこぼれた。写真の中の母も、きっと同じように笑っているだろう。
 母さん、今日も僕は僕なりに一生懸命生きてるよ。
 僕の今日はきっと母さんが僕と生きたかった明日で、ここにある僕の命はあの日母さんが命懸けで残してくれたもの。
 写真でしか見たことのない人で、自分の中ではほとんど他人同然だった。今まで会いたいなんて1度も思ったことは無かったのに、昨日会ったばかりだけど、今すぐにでもまた会いたい。
 大事な日、今日は2人の結婚記念日。
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