【完】Kiss me 社長の秘密と彼女のキス
その日の業務を終え、20時を少し回ったところで麻耶は会社を出た。
職場である式場を一歩でると、一気に都会の喧騒が聞こえた。
楽しそうに行き来する人達の中を少し早足に抜けて駅へと急いだ。

最近は帰宅時間はが23時や日をまたぐことが常だった為、足取りも自然と軽くなる。
麻耶の家は職場から電車で30分ほどの所にある、築12年の2DKのマンションだ。
大学卒業と同時に上京し、当時から付き合っている鈴木基樹と一緒に暮らしている。
同棲のつもりだったが、最近はお互いの休みがまったく合わずもう1年前からはルームシェアの様な状態になっていた。

(寝室を別にしたのはいつだっけ?)

電車に揺られながら、窓の外の景色をぼんやりと見つめながら麻耶はそんな事を考えていた。
学生時代は優しくていつもニコニコしている基樹といると安心でき、穏やかな時間だった。しかしお互い働きだしてからはケンカすらできないほどすれ違っていた。
基樹からは仕事を少しセーブして一緒の時間をと何度か言われたが、どうしても仕事がおもしろく仕事にのめり込んだ。
< 10 / 280 >

この作品をシェア

pagetop