【完】Kiss me 社長の秘密と彼女のキス
不意に目が開いて下から見上げられた綺麗な顔は、確かに少し疲れがあるのか、あまり顔色が良くないように見えた。。
「私の風邪移ったりしてません?本当に少し顔色が悪い気がします……」
頬が熱くなる気がしたが、芳也の顔色が気になり麻耶はじっと芳也を見つめた。
「風邪は移ってないから大丈夫だよ。今日の会食がちょっとな……」
「今日の会食?」
「ああ、いろいろと昔の事をネチネチ言う人でちょっと精神的にやられた」
どういう事が在ったかは分からなかったが、芳也がこんなに弱音を吐くことも、疲れた様子を見せるのは初めてで麻耶はそっと髪を撫でた。

「お疲れ様でした。いつも芳也さんは頑張っているからたまにはゆっくりしてください。私でいいならいつでも膝ぐらいお貸ししますよ」
驚いたような顔をした芳也と目が合って、麻耶は恥ずかしくなってテレビに目を移した。

「なあ、もう少し頭撫でて?」
甘えたように言った芳也の声に、麻耶は驚いたが芳也の洗い立ての髪に手を入れると優しく触れた。

触れたと同時に芳也はギュッと麻耶の腰に手を回すと、顔を麻耶の腹部に埋めた。

「ちょ……と芳也さん……」
その行為に慌てて声を出すと、「落ち着く……」そう言った芳也に、麻耶は何も言えなくなった。

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