【完】Kiss me 社長の秘密と彼女のキス
「基樹、さすがにふたりの家に女を連れ込むのはルール違反だと思う。荷物はまた取りに来るけど今までありがとう」
それだけ声を掛けると、中からバタバタと物が落ちるような音がして「麻耶!」と声が聞こえた。
麻耶は自分の部屋で当面必要になりそうな物をスーツケースに放り込み、天井を見上げため息をついた。

(あっけないな……。4年が終わる瞬間って)
「麻耶……」
後ろから声が聞こえ振り返ると、慌てたように下にズボンだけを履いた基樹が立っていた。
特に掛ける言葉も浮かばず、麻耶はその横を通り過ぎると玄関に向かった。

「麻耶……どこにいくんだ?」
その言葉に麻耶は基樹を睨んだ。罪悪感なのか目の前のいる基樹は、今まで知っている人とは別人に見えた。
「どこ?そんなのわかんないわよ。私の居場所ここにあるの?基樹たちの行為が終わるのを待っていればいいの?そして私が基樹たちのいた部屋を片付けるの?それはあまりにもひどくない?」
静かに靴に目線を落としながら麻耶は言うと扉に手を掛けた。
「麻耶……ごめん!ごめん!でも……」
何か言い訳のような言葉を後ろで聞きながら、麻耶は玄関の扉を閉めた。


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