【完】Kiss me 社長の秘密と彼女のキス
麻耶はあてもなくまた電車に乗ると、無意識に表参道にいた。

(習慣って恐ろしい……)

毎日見慣れた駅で電車をおりるとコロコロとスーツケースを引きながら賑わう街を見ながら歩く。

(何してるんだろ……)

今更ながら現実を噛み締めて涙が落ちそうになった。
(いつからなんだろ?家にいきなり連れてくることはないだろうから、もう随分長いのかもしれない。そんな事すら気づきもしなかったし、こんなことが自分に起こるなんて全く思っていなかったな……)

目についたカフェに入り、店の隅の席に座ると、ゆっくりと息を吐いた。

(これからどうしよう……とりあえず食べてホテルでも今日は探そうかな。ネットカフェとかはちょっと怖いしな……)

そんな事を思いながら、強くないため普段は舐める程度しか飲まないビールと「オススメ」と書かれたパスタを注文し一気に胃に入れた。
空っぽの胃に流し込まれたビールとパスタは麻耶の体温を一気に上げ、バクバクと心臓の音が耳に響いた。
涙が落ちそうになるのを何とか耐え、少しふらつく足取りでホテルでも探そうと店の外にでた。

(やばいかも……)

ふらふらと歩きながら携帯で周辺のホテルを検索していた所で意識が薄れた。

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