【完】Kiss me 社長の秘密と彼女のキス
「芳也さんは物ではないですよ。そしてごめんなさい。それはできません」
はっきりと、アイリの目を見た麻耶に、アイリも目を見開いた。
「あなた……本気なの?!」
「はい。すみません。私も芳也さんが好きです。譲れません」
芳也に頼まれたからこの言葉を言ったのか、本心なのか……自分でもわからなかった。
いや、解りたくなかっただけかもしれない。

しばらく無言の時間が過ぎた。

「でも、あなたの気持ちは報われないわ。芳也は誰も愛さない」
「え?」
それは何となくわかっていた事だったが、はっきりと他の人から言われ麻耶は呆然とアイリを見た。
「芳也は絶対にあなたの思いには答えない。芳也自身がそれを許さないわ」
「じゃあ、アイリさんはどうするつもりなんですか?」
静かに麻耶はアイリは見据えた。

「私との結婚はきっと芳也の両親にとってもいい話だと思う。きっとだからいつか芳也はその通り、望まれたようにするはずよ」
「そんな!芳也さんの気持ちは?」
「だから、芳也の気持ちはないの。芳也が望まないの。今はまだ決心がつかないと思うけど時期がきたらきっとそうするはず。その時にあなたの存在がマスコミとかにかぎつけられたらまずいのよ。わかるでしょ?そこまで馬鹿じゃないでしょ?」

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