【完】Kiss me 社長の秘密と彼女のキス
「失礼します」
静かに言った麻耶に、「これは?」アイリはお金の封筒を指さした。

「それはいただけません」
真っすぐに見つめた麻耶の瞳にアイリも頷いた。
「ごめんなさい。この事は謝るわ」
静かに言われたて麻耶も少しだけ笑みを漏らした。
「送らせるわよ」
「大丈夫です。一人で考えながら帰りたいので」
麻耶はそう言うと、事務所を後にした。

アイリの愛情は間違った方向なのかもしれない。でも誰も愛さない。幸せにならないそう思っている芳也がいる限り、誰も幸せになれないし、アイリも被害者なのかもしれない。

(そして何も持たない平凡な自分より、アイリと一緒にいた方が芳也にとっていいのかもしれないな……)

麻耶はそう思いながらビルを出た。


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