【完】Kiss me 社長の秘密と彼女のキス
「おはよう。家出娘。どこにいく?逃げる気か?」
ギクッとして、その声の方にゆっくりと目を向けると、射抜くような真っ黒な瞳が麻耶を見上げていた。
そしてあろうことか芳也は上半身裸で、社長の時とはまったく違うサラッとした前髪をゆっくりと掻きあげた。
そんな芳也をテレビの中の人を見ているようで、麻耶はしばらく見惚れた。

「い……え、逃げる……なんて……めっそうもございません……きちんとお礼をさせて頂かないと……」
「そうだよな。社会人だもんな。ましてや自分の勤め先の社長に保護されて、その恩も忘れて帰るとかありえないよな?」
なぜか色気さえも感じさせる芳也は、頬杖をつきニヤリと口角を上げいじわるく笑った。
そんな芳也を麻耶は呆然と見据えた。
「なんだ?」
「いえ……会社とは……別の人のようで……」
「ああ、会社は外用。今はオフ」
「はあ、オフ……ですか……」
全くついていけない頭で麻耶はなんとか言葉を発し芳也を見据えた。

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