【完】Kiss me 社長の秘密と彼女のキス
8.動き出す時間
麻耶が芳也の家を出て、もう3か月が経とうとしていた。

「お先に失礼します」
「お疲れ様です」
事務所内にそんな声が聞こえてきて、麻耶も時計を見た。
21時半を過ぎていた。

明日明後日と休日の為、もう少しやっていこうとパソコンに発注データーを打ち込み始めた所で、後ろから呼ばれて麻耶はゆっくりと振り返った。

「水崎さん、ちょっといい?」
「はい」
その顔を見て、始は肩をすくめた。
「まだかかりますか?」
「あっ……。今日やらないといけない事は終わっているので大丈夫ですが。何か?」
「この後少しいいですか?」
「はい」
「じゃあ、着替えて裏口で待っててください」

(外に行くの?)

始のその言葉に疑問が浮かんだが、麻耶は持っていた書類を片付けると席を立った。

残っていた同僚に声を掛けると、更衣室に向かい、ロッカーの中に付いている鏡に映った自分を見て、ため息をつくと簡単に化粧を直した。

(多少はマシにはなった気がするけど……)
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