【完】Kiss me 社長の秘密と彼女のキス
「ひどい顔だな」
悲し気に笑った始の言葉に、「すみません」麻耶はそれだけ言うと俯いた。

(やっぱりマシにはなってないか……)

裏口で始と合流すると、始に誘われるまま、近くのBARに行きカウンターに座り開口一番の言葉はこれだった。

そして麻耶の前にはノンアルコールのカクテルが置かれた。

「弱いんだってな、橋本に聞いた」
「友梨佳に?」
「ああ、心配してた。お前がどんどんやつれて行くって」
「仕事はきちんとやってるつもりなんですが、やっぱり何か問題ありましたか?」
不安げに麻耶は始に尋ねると目を伏せた。

「いいや。仕事は問題ないよ。仕事に問題があったらもっと前に叱ってるよ」
始は悲し気な表情を見せると、ビールに手を付けた。


「何なら食べられそうだ?ちゃんと食べてるのか?」
「食べてますよ。もう3か月以上たちましたよ。大丈夫です」
その言葉に始は苦笑しながら、軽い物をいくつか注文すると麻耶を見た。

「大丈夫か……。そうは見えないからこうして呼び出したんだけどな」
今度はその言葉に麻耶が苦笑した。

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