【完】Kiss me 社長の秘密と彼女のキス
「あの……お礼はいくらほど……私そんなに持ち合わせが……」
財布を取りに行こうとベッドから降りようとしたが、相変わらず掴まれたままの腕で自由が利かず、麻耶はため息をついた。
「金で済まそうって?」
少し不機嫌そうな芳也に、麻耶はビクッと体を震わせた。
「いえ……そんなつもりでは……」
「お前の払える金額なんかじゃこの恩はかえせるわけないだろ?そうだな……」
芳也は少し考えるそぶりを見せて、麻耶をジッと見た。
「お前の身で払ってもらおうか?今日からお前は俺のいう事を聞いてもらう」
「え!!そんなの無理!どんな命令されるかわからないじゃない!」
慌てて口を押えて芳也を流し見ると、表情の無い真っ黒な瞳が麻耶を捉えた後クックッと喉を鳴らして笑った。
「お前も意外に強気だな。社長に向かってその口の利き方。まあいい。お前には役に立ってもらうから」
「私にお役に立てる事なんてあるとは思えないんですが……!!」
その芳也の態度になんだか腹立たしくなり、麻耶は芳也を睨みつけた。

そんな麻耶に構うことなく「お前は俺を守る盾になればいいんだよ」と不敵な笑みを漏らした芳也に、麻耶は目の前が真っ暗になった。

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