【完】Kiss me 社長の秘密と彼女のキス
「もちろん命にも別状はなかったし、後遺症とかそう言った事ももちろん何も無かった。でも彼女は宮田の家と懇意にしている、名家のお嬢さんだった。娘をなんだと思っていると彼女の父親が乗り込んできて、家を巻き込んで大騒動になった。その事があって、健斗さんは塞ぎこむようになり、それ以来誰とも恋愛しない人になった。そして芳也は父親に追い出されるように、アメリカに留学させられた」

麻耶は思った以上に重い内容に、すっかり何を話すべきかわからず黙り込んだ。

「それから、芳也もあの家から離れて、大人になってその時の事で苦しむようになった。どうしてあんなことをしてしまったのだろう。とそればかりを口にするようになった。それから芳也は人と深く関わることをやめた。社長業をしているときの芳也を見ればわかるだろ?自分を押し殺して、自分の自由は二の次。自分を傷めつける様に仕事に没頭して言った。そしてストレスのせいか体調も悪くなっていった。頭痛もその一つだよ」
麻耶はそこで、持病で頭痛があると薬を飲んでいた芳也を思い出していた。

「これが芳也の過去。水崎さんがこの事を聞いてどう思うかは自由。過去にそんなひどい事をして信じられない!そう思うのも自由だしね」
少し皮肉にも聞こえる初めの言い方に、麻耶は少し睨んだあとフッと笑った。

「そんなこと思わないってわかっていて話しましたよね?じゃあ、館長はそんな事をした芳也さんは友人じゃないんですか?」
その言葉に、始も小さく笑みを漏らした。
「だな。俺は痛いほどアイツの苦しむところを子供のころから見てきて、そして大人になっても苦しんでるアイツを見てきた。俺にとって大切で一番幸せになって欲しい相手だよ」
その言葉に、麻耶はじっと始を見た後、

「やっぱり館長は芳也さんの事が好きなんですね。だから彼女作らないんですか?」
その言葉に、「バカか」それだけを言うと、始はゆっくりと麻耶を見た。
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